大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和30(オ)827 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人弁護士臼杵敦の上告理由第一点について。

本件訴状及び第一審判決に被告の表示としてA太郎と記載しあり、また、本件控

訴状に控訴人の表示として、同じくA太郎と記載しあることは、所論のとおりであ

る。しかし乍ら、記録によつて認め得られる本件訴訟の経過に鑑み、特に第一審に

おいて上告人から提出された弁護士福本貞義に対する訴訟委任状に着目して考うれ

ば、右はA治郎と記載すべきであつたのを誤つてA太郎と記載した全くの誤記であ

ると認めるのを相当とする。そしてまた、所論のとおり本件控訴は第一審訴訟代理

人福本貞義が第二審訴訟代理人として提起したものであるが、前示委任状の文面よ

りすれば同弁護士は本件控訴申立の特別権限を授権されていたものと認定すること

ができる。されば右と相容れない所見の下に種々云為する論旨は採用できない。

第二ないし第四点について。

原判決が、控訴人の表示をA太郎ことA治郎と記載したことは所論のとおりであ

る。しかし原判決は、第一審判決が被告の表示をA太郎と記載したため、このA太

郎は控訴人A治郎とは別人でないことを注意的に示す趣旨において右のように記載

したものと認めるのを相当とする。また、被上告人が原審において提出した所論当

事者表示誤記訂正申立と題する書面も前記誤記を明らかにした趣旨に外ならないも

のと認むべきである。

次に、前叙の本件訴訟の経過に徴すれば、所論甲第一、二号証中A太郎とある記

載は上告人を指称したものと認めるのを相当とする(所論甲第三号証にはA次郎と

は記載しあるが、A太郎とは記載されていない)。されば、叙上と相容れない所見

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の下に種々論議する論旨はすべて採用できない。

第五点について。

しかし乍ら、上叙の本件訴訟の経過に鑑みれば原判決が判示事由の下に所論抗弁

を却下したのは正当であつて、その処置が所論手続法に違背したかどあるを見出し

得ない。なお、所論当事者表示誤記訂正申立が前記のとおり単に当事者表示の誤記

を明瞭ならしむる趣旨に外ならないものであり、従つて、当事者を変更する申立と

解すべきではないから、所論違憲の主張はその前提を欠き採るを得ない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

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